「税金を滞納してはいけない訳」

税金は、住宅ローンや他の債権に比べて、最も強力な徴収権や執行権を持つ債権の1つです。
税金は、「滞納しない」「優先して返済をしていくこと」を心掛けてください。

・税金には滞納処分という独自の権利がある
住宅ローンなどの民間の債権は、自ら強制的に債権を回収する事は禁止されています。差押えにより借金を回収する場合には、司法手続きを得、裁判所の許可を得てから、差押えがようやくできます。
税金に関しては、行政処分となるので裁判所の許可なく、対象となる不動産や預金の差押えが可能です。ですが税金の「滞納処分による無益な差押え」は法律で禁止されています。差押をしても、他の優先される債権により、配当の見込みがないケースです。
物件の売却価格見込みが1,000万円、優先される債権である住宅ローンの残りは1,500万円。これでは税金の滞納分で差押をしても、売却後の配当は見込めません(オーバーローン)。このような状況でも差押えをすることを「無益な差押え」といいます。合わせて、差押えの入っている対象不動産が、優先債権を超える見込みがなくなった場合は、差押えを解除しなければいけない。と解除義務も定められています。
ですが、現実には無益な差押えもおこなわれ、解除義務に応じないケースも頻繁に見受けられます。

・住宅ローン(抵当権)と税金の優先順位について
通常税金には、国税優先の原則が定められていて、どの債権よりも優先されますが、抵当権についてはそうではありません。税金の納期限以前に設定された抵当権は、優先的に徴収できます(※税金の差押え登記日ではなく、納付期日)。
抵当権設定が2019年9月1日の場合、納期限が2019年8月31日までの税金滞納分が、住宅ローンよりも優先して徴収されます。
実際は、オーバーローンでの任意売却も少なくありませんので、その場合はハンコ代を支払って(税金の滞納分は完済でなく、数十万円を支払って)差押えを解除してもらっているのが、現状です。これには優先する債権の抵当権者の承諾が必要です。競売で売却して、滞納分が全く回収されないよりはと、応じてくれる役所も少なくはありません。

・今後の支払いの意思をしっかりと伝える
役所にハンコ代の交渉をする際に大切なことは、将来に向けての納税(返済)の意思をしっかり伝える事です。
差押え解除になっても、支払いの義務は当然ありますので、今後どのように払っていくかをしっかりと担当窓口に説明して下さい。これからちゃんと払ってくれるだろうと思わなければ、差押え解除には応じてくれません。